(即席恋人)
貴方が と呼ぶ其れに
興味など湧く訳もないのに
褪めた笑いは
微かな笑顔で隠して
仮初めの相手程度なら
傷はまだ浅いはずだったのに
(オディール)
仮想世界の中でなら
貴方に恋をするのではなく
貴方に恋させることも
可能性としては
有り得た話。
肉体を持つ世界だからこそ
貴方は私の心に眼を閉じて
見せ掛けだけの私に目を向けるから
■
滲んだ風景の中
ゆっくりと遠ざかる夢の跡が
鎖となってしまったから
また
何所へも行けずに溜息を吐く。
■
暁の空に消えたのは
貴方との夢
見る影も無く
無残に打ち棄てられた夢は
朝靄の中
哀しく融けてゆきました
■
片方は失くした
もう片方は棄てて
僕はもう
身軽になったから
■
溜息に似た祈りと
貴方へ捧げる言霊が
どこか近いのは
きっと
どちらも
届かないと謂う意味に於いては
■
両手を縛るのは
キミを抱きしめようとする自分を