暮れ落ちてゆく街並みと 波音に背を向けて遠ざかる 頃に 君との恋が終わるなら さあ、新しい季節へ。 新しい恋を探しに行きましょう。

安定と謂う名を持つ 不確定要素 ただ 貴方が此処にいる この時だけに訪れる まやかしの安寧の時。

巡る時を共に過ごせたのなら 君は君の歴史を。 僕は僕の歴史を。 共に歩かない歴史の底にも いつも君の姿が流れるのです。

愛しい貴方を 醒めた瞳で見つめる瞬間。 だって もう 笑おうとしても 貴方が戻ってこないことを識っているから

こうして 貴方の記憶から少しずつ私が消えていく。 哀しい記憶も 愛しい記憶も 惜しむ気持ちは無いけれども 最後の欠片も消えたなら 貴方はいつか 私のために泣いてくれるでしょうか。

要らないモノなら 棄てられても惜しくはないから 私は貴方を必要としない。

ほらね。 キミは僕を 僕じゃないものに見てくれるから キミの前でなら 僕は自由と云う拘束から抜け出せる。

身が粉になるまで、キミに仕え続けよう。 降りかかる粉を払う様に キミは希望をコナゴナしてくれるから。

臭い物にはフタを。 ああ、もう。 キミの物など、あの時に棄てれば良かった。

キミは僕を染めようとするけど 僕はキミが思っている様な人間ではなくて。 残念ながら既に染まっている僕を 塗り固めたところで 僕はキミの望む色にはなれないよ?

絵描き

キミの描いた幸せよりも 床につけられた絵の具よりも 残り香のように漂う テレピン油のキミの想い出

芽を出す前に死んでしまった 貴方への気持ち

ラスク

開けなければ 砕けることも 湿気ることも なかったけれど。

貴方が私に向けた 全ての言葉 優しい嘘も そうでない嘘も 全てが嘘であったなら それは多分 私に向けた想いそのものが 嘘だったという ただそれだけの事実。

さよならを告げた。 貴方が知らない場所で 貴方が気付かない瞬間に 貴方に さよならを告げた。 戻る先を棄てたのは自分なのだと 貴方が気付かないうちに さよならを告げた。

週末の予感 またキミと逢えない 僕の居ない時間でキミはまた 誰かとの時間を刻む。

紡げば紡ぐほど遠ざかる キミへの熟れすぎた言霊は 熟れすぎて腐臭を放つ どうせなら 離れるなら どこまで遠ざかれるのか 試したい衝動に駆られて困る

メンテナンスもしない恋心でも 錆一つなく光ると思っているのなら 真っ黒に錆び付いた刃先ごと 貴方の心臓に捩じ込んであげる。

勝手に忘れて色褪せさせて 思い出なんかにされるなら 貴方に捧げ続けるこの想いだけでも セピアではなく黒檀の様に塗潰して消して忘れさせて

サボテン(B面)

少し、疲れてしまったわ。 ……或いは、少しずつ疲れていっていたのかも知れないけれども。 彼女はそう言って薄く笑みを浮かべた。 心がこもって居ない営業スマイルとも違う、表情筋の微かな歪み。 そんな顔をする時はね、構わなくて良いのだと 言われては居る…

サボテン

それでも、と 僕の前に座ったドォルは続ける。 私を『女』にしたのは貴方ですよ?と苦笑めいた表情を浮かべて。 このドォルは、いつの間にこんな表情をするようになったのだろう。 僕が拾った時には、少女のような笑みか無表情でしかいなかったというのに。 …

貴方の睦言など信じていなかった 等と 嘯き続ける自己暗示。 解いて抉って微塵になるまで 傷つけ続ければ 貴方の遺した痛みも紛れると思い

訊きたいことなんて そんなことではなくて それでも 訊けなかった言葉が 私の存在を 拒否するのだと 真夜中の月よりも冷たく 転がって騒めいて 私に向かって叫声を挙げる。

始まりがなくても 終わることはあるのだと 最後にでも キミに言えたなら 終わらなかったのかもしれないけれど。

物分りが良い、ということは 貴方にとって 都合が良い、ということくらい わかってて、やってるの。 貴方が望まないから いつだってそうやってきたでしょう?

貴方の未来は閉ざしてあげたの。 逃げる先は唯一つだけ。 貴方が その道を進んでも、 良いと思って。 貴方には教える気はないけれど あの人との未来へ進む気がなくなったら 後ろの扉は開けてあげる。

逃げる時機を失ったから 貴方にとっては刹那の戯れでも 貴方を忘れるためには 私の寿命は短すぎて

一緒に居る時間が 仮初だとしたら 真実は 貴方の居ない空間。 思い出の中に閉じ込められていては 現実にいる私まで逃げ出せない。

それはもしかしたら ただの感傷かもしれなくて キミの幸せを見つけた時に 胸の辺りがシクリと痛む。 僕の傍でだけ キミの幸せが在ったのなら良かったのに。

キミが あの人の様に僕を想ってくれたら あの人の様に僕を扱ってくれたら あの人の様に僕を愛してくれたら あの人の様に僕を壊してくれたら 想われるのは一瞬でも 想うココロは永遠でも あの人が僕と繋がることは 二度とは叶わない夢なのです。